2020年3月13日金曜日

【感想】岸本佐知子『ひみつのしつもん』

岸本佐知子『ひみつのしつもん』(筑摩書房)


岸本佐知子氏の『ひみつのしつもん』を読み終えての感想です。

岸本佐知子氏に関してごく簡単で偏見的な説明をすると、翻訳家で日本ではあまり知られていない作家の作品を日本に紹介してくださる素敵な方です。
エッセイも書かれておられ、本書は『気になる部分』(白水社)『ねにもつタイプ』(筑摩書房)『なんらかの事情』(同)に続く通算4冊目になり、筑摩書房PR誌「ちくま」に掲載されていたものから選りすぐられたものなります。




さて『ひみつのしつもん』。

内容は日常の疑問や体験談が主ですが、読み進めていくうちに無さそうだけどもしかしたらあるかもしれない事、あったらいいな、「もし◯◯だったら」「もしかしたら◯◯なのか?」など日常生活で見過ごすような小さなことを掘り進めていき、体験と妄想の境目が滲み出して並行世界へと連れて行かれます。


この本で私が特に気に入ったものは、

「カブキ」:頭の中で白人二人に歌舞伎をどう説明するか

「体操」:運動を何かしていますか?との問いに窮する著者が出来る「ラジオ体操第X」の考案

「洗濯日和」:洗濯竿が倒れ、竿の中からドロドロの液体が出た瞬間に著者の意識が三つに分かれる話。ドロドロの液体にも私の意識が乗り移る。

「ネジ」:部屋の中に用途不明の年季の入ったネジが落ちていた話。


ですがすべておすすめです。
書籍化されるのが待てないので筑摩書房のPR誌「ちくま」を年間購読しています。
書籍未収録になるエッセイもあります。
できれば電車の中などでなく、ひとりのときにじっくり時間をかけて堪能していただきたいと思います。

ご覧いただきありがとうございました。



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