鯨統一郎氏の『文豪たちの妖しい宴』(創元推理文庫)を読んだ感想です。
ネタバレはありません。
『文豪たちの妖しい宴』は通算98冊目の著書です。
バーを舞台に、日本の誰もが知っている名作を、今までには無い新しい切り口で論じています。
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●登場人物は、
文学部教授の曽根原、
バー「スリーバレー」のバーテンダーのミサキ、
常連客の宮田。
本来のスリーバレーのバーテンダー松永は、忙しいようでミサキがピンチヒッターとして働いています。
ミサキは『歴史はバーで作られる』にも登場しているバーテンダーです。
宮田、スリーバレーに関しては過去の作品にも出ております。興味ある方はこちらを御覧ください。
●舞台の「スリーバレー」は鯨統一郎の作品には馴染みのあるバーです。
デビュー作『邪馬台国はどこですか?』にも出てきたバーです。上記のリンクにもありますので合わせて御覧ください。
●さて、内容は
夏目漱石『こころ』
太宰治『走れメロス』
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』
芥川龍之介『藪の中』
の中短編から構成されています。
ひとつずつ簡単な内容を記します。
●『こころ』は百合小説かつ、ミステリーにもなっているということです。
●『走れメロス』はある登場人物が計画を練っていて、それがカクカクシカジカなり、メロスは走っている、というものです。
●『銀河鉄道の夜』は、妹のことを書いたというのが通説ですが、その奥にもまだ秘密が隠されています。
●『藪の中』は、殺された被害者は結局わからない、と一般的にはなっていますが宮田は「犯人は作中に書いてある」と曽根原を論破します。
また、『藪の中』の犯人を示しつつ芥川龍之介が自殺した理由の新解釈もあります。
ちなみに恩田陸はエッセイ『土曜日は灰色の馬』(ちくま文庫)の中で、『藪の中』の犯人は誰なのかを論じています。鯨統一郎と恩田陸、それぞれ犯人は違いますので両方読んでみると興味深いと思います。
●一度は誰しも読んだことのある名作のことを書いているし、四編それぞれ簡単なあらすじも書かれているので入り込みやすく読みやすくなっています。
『文豪たちの妖しい宴』を読まれ気に入ったのなら、『九つの殺人メルヘン』『浦島太郎の真相』も昔話の新解釈を披露されているのでこれらもおすすめです。
ご覧いただきありがとうございました。
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