岸本佐知子『ひみつのしつもん』(筑摩書房)
岸本佐知子氏の『ひみつのしつもん』を読み終えての感想です。
岸本佐知子氏に関してごく簡単で偏見的な説明をすると、翻訳家で日本ではあまり知られていない作家の作品を日本に紹介してくださる素敵な方です。
エッセイも書かれておられ、本書は『気になる部分』(白水社)『ねにもつタイプ』(筑摩書房)『なんらかの事情』(同)に続く通算4冊目になり、筑摩書房PR誌「ちくま」に掲載されていたものから選りすぐられたものなります。
私は大阪という都市にいる。正確には「大阪市中央区」と呼ばれる区画に分類される場所らしい。なぜここにいるのか、正確な経緯は思い出せない。おそらく、あの不快な医師が「気分転換になる」と言っていた気がする。だが、誰の気分を、どこへ転換するというのだ? 朝、私は「なんば」という場...